シャボン&ピース

シャボン宮殿での日々の一コマ

カレンデュラ・クリーム after bath

 

 

バスローブを着て戻ってくるシャボナン。ソファ室ではシャボニーナが紅茶を飲んでいる。


シャボナン  「キミは本当に紅茶が好きだねえ。いつも飲んでる」

シャボニーナ (カップをテーブルに置いて)「こうしてると落ち着くのよ、温かい飲み物を飲んでいると」

シャボナン  (笑いながら)「将来、縁側で紅茶を飲むおばあちゃんになれるよ」

シャボニーナ (横目でにらんで)「喜べばいいのかしら、それ」

シャボナン  (黙って頭を拭く)

シャボニーナ 「で、どうだったの?肝心の話がないみたいだけど」

シャボナン  「石鹸のこと?」

シャボニーナ (頷く)

シャボナン  「よかったよ」

シャボニーナ 「…だけ?」

シャボナン  「え?だけって?」

シャボニーナ 「あのね」(ため息をつく)「あなた、それじゃ料理番組のレポーターが『おいしい♪』って言ってるのと同じじゃない。それじゃ何にも分からないわ。もう少し人に伝える練習をしなさいよ」

シャボナン  (口をとがらす)「そんなこと言ったってボクは別にレポーターなんかじゃないやい」

シャボニーナ 「同じことよ」(間)「物事を伝えることの大切さはレポーターでも妖精でも変わらないわ」

シャボナン  (後ろを向いて舌を出す)

シャボニーナ 「もう一度よく思い出してみて」

シャボナン  「えーと」(上を向いて考えるしぐさ)「…そういえばバスルームの中で使うと最初に感じた時ほど強い匂いだとは感じなかったかな」

シャボニーナ 「そう」

シャボナン  「まあ、まったくないというわけではないけど…でもこれはどちらかというと女の人向けの匂いかな」

シャボニーナ 「あら、匂いに女向き、男向きなんてあるのかしら」

シャボナン  「え、また…」(答えに詰まる)

シャボニーナ 「春に桜を見れば男女の区別なくきれいだと思うでしょ?何かのお祝いの時には男の人だって花束を贈ったり、贈られたりするでしょ?もともとお花を愛でることに男女の区別なんてないの。それと同じで、ハーブの匂いを男の人がいい匂いだと感じてもいいのよ。それで心がリラックスすれば十分なの。こと石鹸に関しては男の人向き、女の人向き、なんていう分け方は不要だわ」

シャボナン  「ふーん…そんなものかな」(間)

シャボニーナ 「あと何かある?」

シャボナン  「あと?え~っと」(こめかみを掻く)「そう、そうだ、タオルで泡立てる時、オレンジの皮がタオルにくっついてきた。あれがいかにも自然なものを使ってる気がしてボク的にはプラスの印象だった」

シャボニーナ 「そう」

シャボナン  (にんまりと)「あのオレンジの皮、なんかマーマレードを思い出すんだよなあ。大好きなパンが食べたくなってきちゃうよ」(そう言って腕の内側のあたりを掻く。よく見ると何ヵ所か赤くなっている)

シャボニーナ 「シャボナン、あなた、それどうしたの?」

シャボナン  (腕の赤くなったところを見て)「ああ、これ?」

シャボニーナ 「そうよ、赤くなってるじゃない。まさか石鹸が合わなかったとか?」

シャボナン  (急いで首を振りながら)「違うよ、違う。これは汗疹だよ。夏の時期はボクはいつも汗疹になるんだ」

シャボニーナ 「あせも…」(身体の力が抜けた様子で)「どうなのかしら、あせもになる妖精って」

シャボナン  「しょうがないだろ。夏は子供だって大人だって妖精だって汗疹になるんだ」

シャボニーナ 「私はならないわ」(覗きこみながら)「それにしてもずいぶん赤くなってるわね」

シャボナン  「寝てる時とかに掻いちゃうからね。ここだけじゃない。どこもかしこも真っ赤だよ。だからボクも最初にこの石鹸を使うとき、ひょっとしたら沁みるかな?と少し心配したんだ。でも」

シャボニーナ 「でも?」

シャボナン  「まったく平気だった。全然沁みなかった。もちろん、ゴシゴシとこすったわけじゃないけれど、沁みないという点においてすごく安心して使えたよ」

シャボニーナ 「よかった…それはまさにこのカレンデュラクリームの特徴ね。実はこの『ジョン&ダイアナ』にはたくさんの種類の石けんがあるんだけれど、このカレンデュラクリームはその中でも最も刺激が少ないタイプのものなの。だからあなたのような汗疹の人が使っても平気だったのね」

シャボナン  「うん。やっぱり肌に優しいというのは大事なことだよね、男が使うにしてもさ」

シャボニーナ 「汗疹の人が使うにしてもね」(笑う)「あと、洗い上がりはどうだったかしら?」

シャボナン 「さっぱりした感じ。顔がちょっとキュッキュッしたかな。でもつっぱるというわけではなくて、気持ちのいい感じ。汗をかいた夏の日の朝なんかにいいかもしれない。ほのかな匂いが朝の脳に刺激を与えてくれる気がする」

シャボニーナ (くすっと笑う)「そうね、朝の弱いあなたなんかにはピッタリかもしれないわね」

シャボナン  (ヘンな顔をする)

(小さく拍手)「やればできるじゃない、シャボナン。とりあえず今日はそれだけ伝えられれば十分だわ」

シャボナン  「ハハハ…なんとか合格ってわけだ、よかった」(髪の毛の乾き具合を確かめる)「さて、心も身体もサッパリしたところでそろそろ出かけようかな」

シャボニーナ 「あら、どちらへお出かけ?」

シャボナン  「東京ドーム。今日はこのあと巨人戦があるんだ」(チラッとシャボニーナのことを見る)「キミも行くかい?」

シャボニーナ (ティーカップに手を伸ばしながら)「私は結構よ。騒がしいところは苦手なの」

シャボナン  「そっか」(肩をすくめ)「じゃあ、またね」(右側のドアから出ていく)

シャボニーナ 「いってらっしゃい」(ひとり紅茶を飲む)